受賞報告

  日刊航空通信 第13294号 平成18324日金曜日 

      ◎ ソーラーセイル膜面展開機構でフライトモデルを初製作

            <飛揚! 中小企業>、小野電機製作所インタビュー
  「お客さまにファンになってもらおう」―。各研究機関や大学から寄せられる難題に、様々な知恵と工夫で応えてきた同社は、全員がこの想いを込め、一品モノの試作品作りに励んでいる。そして、その想いと優れた機械加工技術は2月22日、実証モノに結集されて宇宙へ飛び立つことになった。『飛揚!中小企業』シリーズ第11弾。JAXA宇宙科学研究本部のソーラーセイル膜面展開機構を製造し、宇宙への進出を果たした小野電機製作所に迫ってみた。(鈴木)

【(株)小野電機製作所〜社員の『暖かさ』で研究開発を支援〜】

 精密機械加工を得意とし、光学機器の部品からロボットハンドなどの機構まで手掛ける同社。昭和13年の創業から築き上げてきた確かな技術力、設計力、柔軟な創意工夫が大きな武器だが、本当の魅力は、小野芙未彦社長らが実践している「情熱と知識の提供は無料です」という『暖かさ』に他ならない。今から16年ほど前、東京工業大学の研究室からの依頼でロボットの研究を支援することになったが、その時の『暖かさ』が感謝され、今も、卒業生らが相談を持ちかけてくる程だ。その一例が、先月22日に、赤外線天文衛星のサブペイロードとして打ち上げられた、JAXAのソーラーセイル膜面展開実験の展開機構であり、情報通信研究機構(NiCT)が研究を進めているSmartSat(軌道上ランデブー実験や衛星間光通信実験などを目的とした衛星)のカメラを支える雲台などである。「時には、何時間も議論することがあった」と、学生らとの協働を楽しそうに振り返る土屋敏男・技術部長は、苦労などおくびにも出さず、「優しさ」、「心強さ」を醸し出している。 
 同社が本格的に宇宙開発関連に乗り出したのは、1999年に宇宙開発事業団(NASDA・現JAXA)から依頼された一次元空気浮上式擾乱測定装置の開発に遡る。人工衛星を高精度に制御するため、リアクションホイールの性能評価を重視していたNASDAは「綿毛がそっとなでるような微小な力も高精度に測りたい」と、従来の10〜100倍の測定精度(10
−4N)を持つ擾乱測定装置を求めていた。そこで、相談をもちかけた先が小野電機製作所。同社は、非宇宙関連企業ならではの視点から、ガラス基盤を空気で浮かせるエアパッド(鋳物で、無数に空いた小さな穴から空気が流れて、対象物を持ち上げる)に注目すると、これを6個並べて「浮く土台」を作り出し、更に、空気の当たる部分にガラスを貼って、空気の当たる面の滑らかさを均一化させるなどの工夫を凝らして、見事、クーラーの僅かな風でも動いてしまう程の土台(抵抗が全くない!)を持つ装置を作って見せた。そしてNASDAは、「みどりU」など多くの衛星のリアクションホイールの性能をこの装置で評価すると、「世界で一番優れたデータを出している」と感嘆し、2002年11月には、品質管理の向上に大きく寄与したとして「品質管理功労賞」を授与することとした。現在、この装置の発展型となる2次元空気浮上式擾乱測定装置は、大手電機メーカーも導入することになった他、ホイール以外の実験でも利用されており、宇宙開発の現場で必要不可欠な存在となっている。 
 こうして、大学から各機関の研究まで幅広く活躍することになった同社は、ついに、宇宙で実際に試験するフライトモデルを製作することになる。折り畳まれたソーラーセイルを遠心力でゆっくり広げられるよう、セイルの付いたドラムをモーターで回転させる展開機構である。技術的に難しかったのは、18cm×26cm×34cmという限られたスペースの中にドラムを折りたたみ、宇宙で展開させて、膜を広げなければならない部分。要求されたドラムの展開は2軸だが、仕様が許すアクチュエーターは1つだけ。試行錯誤の結果、バネで展開できるよう工夫を凝らし、見事、ドラムの展開に成功した。膜面の方は、残念ながら、1/3ほど開いて止まってしまうことになったが、サブペイロード実験を指揮したJAXAの津田雄一助手は、「我々にとっては過程が大事。しっかりデータを取ることができ、プラスの実験だった」と述べ、感謝を寄せている。

 そして、NiCTのSmartSatでは、軌道上ランデブーを実現させるのに不可欠なカメラを、ぶれることなく、且つ、スムーズに360度回転できる雲台を製作することになった。しかも、打上げ時の振動には全く揺れないという条件付きである。同社は、回転部を精密に加工していく他、従来は対の歯車が使われていた回転部を「ねじ」と「歯車」の組み合わせに変えることで、ストッパーなしで振動を抑えられる雲台を製造した。現在、この試作品は各種試験を受けており、今年中にはフライトモデルを製作する見通しとなっている。
 知恵と工夫を加えて「解」を出し、数々の研究を支え続ける同社。技術部の福永美英・機構設計係長は「使えるモノを探してきただけ」と謙遜するが、研究者の想像をカタチにするのは並大抵のことではない。小野社長の言う、「お客さまにファンになってもらおう、喜んでもらおう。いきなり100%(要求通り)は無理かもしれないけど、話し合いに多くの時間を割いて、100%に向かって努力していきたい」、その志が全社員に浸透し、皆の心が、手が、感覚が、この国の宇宙開発を支えていた。

【会社データ】

(株)小野電機製作所=〒142−0051東京都品川区平塚2−4−17、
    TEL03−3783−6781、HP http://www.ono-denki.com
◇事業内容=○光学機器部品・半導体関連部品などの精密機械加工部品製作○研究用ロボット(宇宙・海洋・災害・医療・VR)関連設計・製作 (JAXAからの依頼で、7軸も可動するロボットハンドも製作中。実現すると、ISSの修理・点検を、このロボットハンドで行えるようになる) 
◇PR=アドバイスに時間を割き、研究者の研究開発を支援していきます。

 

 

 
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